授業の過程での著作物の利用については、従来、複製及びリアルタイム双方向遠隔授業における公衆送信を著作権者等の許諾を得ることなくできるとされていましたが、平成30年の著作権法の一部改正により、その範囲が授業のためのオンデマンド送信やスタジオ型送信としての公衆送信や自動公衆送信を受信した公の伝達にまで拡大されました。また、これに併せてオンデマンド送信やスタジオ型送信としての公衆送信については、学校設置者が文化庁の指定する権利者団体(指定管理団体)に補償金を支払うという仕組みも講じられました。
この改正内容は、当初は令和3年4月から施行する方向で関係者間での調整が進められていましたが、新型コロナウイルス感染症が流行したことで、大学をはじめとする多くの教育機関では、オンラインによる遠隔授業の導入が不可欠となり、この事態に対応するため、当初の予定を1年前倒し、かつ、補償金額を無償として令和2年4月末に施行されることになりました。
本制度は、このような緊急的かつ特例的な措置を経て、令和3年4月から本格的な運用が開始されていますが、制度の運用に当たっての具体的な考え方の整理や対応の在り方については、教育関係者・権利者・有識者から構成される「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」において,教育現場の実情、権利者側の創作や流通の実情等を相互に共有しながら議論されており、その成果については「運用指針(ガイドライン)」として整理されています。教育現場における著作物の利用をめぐる環境は日々変化しているため、この議論は今後も継続され、運用指針も随時更新・改訂されていく予定となっています。
この間、1年半ほどの実施と上記「関係者フォーラム」における検討等の中から、今後の課題や対応・整備しなくてはならない体制等が明らかになってきました。
具体的には、新制度の対象となる著作物等利用行為の例示や分かりやすい類型化の解説、該当/非該当を判断するための適切な対応例の集積(Q&AのDB化)、それを教育現場で広く利用できるようにするためのシステムの構築と継続的な管理・運用であり、もう一つは、著作物の円滑な利用や著作権の理解をそれぞれの教育機関で促進するため、それを支援する人材像を確立し、継続的に育成できる機関を設立するとともに、育成した人材が有効に活躍できる配置策等を構築することです。
今回のセミナーでは、「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」に参加されるとともに、著作権教育を実践されている福岡教育大学教授の大和淳氏より、講演いただきます。
本セミナーを一つのきっかけに、新たなフェーズで著作物を円滑に利用できる教育環境を迎え、これを今後さらに簡易・迅速な権利処理システムとも組み合わせていくために必要となる様々な課題などについて、参加者の皆様とともに考えていきます。
( ポスター )
日 時: | 2022年1月18日(火) 14:30~16:00 |
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場 所: | ZOOMによるウェビナーで開催 |
大和 淳 (福岡教育大学教育学部教授) | |
主 催: | 千葉大学アカデミック・リンク・センター | 共 催: | 大学学習資源コンソーシアム(CLR) |
お申込: | こちらのページの案内に従ってお申し込みください。 (申込期限:1月16日(日)) |